外の世界は意外と楽しい

海外経験者のサードプレイスAWAY LOUNGE代表者のブログ

日記:<訃報>20160712

この日は、いつになく素晴らしい寝覚めだった。

8:30に目が覚め、ベッドでグダることなしに机に向かい、パソコンに貼った付箋で1日の予定を確認し身支度をして大学へ向かった。
そこまで暑いわけでも湿度が高いわけでもなかったので、リュックを背負っても汗びっしょりにはならなかった。

コンビニでいつものようにウイダー(マルチビタミン)を購入し、1限が始まる数分前に到着した。
火曜日の今日は、1週間で1番長く大学にいる日である。1限から6限まである。気合いを入れなければ。

午前中の授業の後サンマルクで息抜きをしていると、先日知り合ったアフリカに飛び立つ創価生や、AIESEC時代の先輩でアメリカの院に進学する上智生がやってきた。おまけに、先日の浴衣デーで撮影したデータを取りに同級生の女の子も2人きた。さっぱり休めなかったがいい時間だった。

学校に戻り、アメリカに関する帰国子女だらけのゼミに参加する。提出した私のプレゼンの構成はめちゃめちゃで、やはりそこは指摘され、再構成しなければとはっきり自覚した。

19時前、ようやく大学がおわり帰路につく。
ローソンで弁当を購入して帰る。

家に帰り、サマージョブのESを書きながら、トビタテ2期の友人とチャットする。
最近帰国したばかりらしく、
「おっ!お疲れ様。月末会おうな」
というような感じだった。ここ最近はこんなやり取りが多い。仲間が皆帰国してくる。
外の洗濯乾燥機からぐおんぐおんとドラムが回る音が聞こえるし、部屋の換気扇がかたかたと頼りなさげな音を立てている。
あー、平和だな日本。とか無駄に抽象的に考えていた。

突如文脈を無視したメッセージが届く。
「トビタテからのメール見た?受け入れられない」
嫌な予感がした。この忙しい時期に追加の書類提出を求めるとか、不備のある書類があるため奨学金取り消しとかそんな案内かと思った。
重い指を動かし、IPHONEのメールボックスを開く。
ロードする。
TOBITATE-XXXXXXX@XXX
からのメールを受信する。

件名は、「訃報」だった。

トビタテの人は皆世界中に飛び散っている。危険地域に行く人もいるし、それは覚悟の上のはず。「ついに起きてしまったか」と正直なところ思った。
しかし、本文を読んで膝から崩れた。

「これまで、トビタテ生の学生ネットワーク・コミュニティー化を担当していた押鐘さんが、昨晩の7月11日に亡くなりました。」

彼は最も学生に近い位置で、トビタテの事務局と奨学生の距離を近づけようと昼も夜も平日も休日も奔走してくれていた人だった。
さらけ出して隠さないゲスな部分が人間らしくて、だからこそ信頼できる人だった。
まだ30歳で、結婚したばかりの人だった。

呆然とする。

親しい人の死からここ10年以上無縁だった。
そして、一緒に活動している人の死は初めてだった。これからも一緒に仕事していきたいと思っていた人の死は初めてだった。
7日前に一緒に飲んで笑った人の死は初めてだった。次回の飲みの約束をしていた人の死は初めてだった。

彼と交わした最後の言葉は赤坂見附駅前でのこのやり取りだった。
「あれー?ちか(上司)先行っちゃったよ。一緒に帰ろうぜって声かけてくれると思ったんだけどな〜。おいとっきーまた飲もうぜ。じゃーな。」
「あ、本当。行っちゃいましたね。もちろんです。月末か8月頭にまた。」
こうして小走りで東京メトロに消えていった。
トビタテの事後研修打ち上げの2次会が解散する、7/3と4の境目だった。

訃報を受けてしばし放心したあと、
一緒に花見に行ったり、カラオケで朝まで歌ったり、二人してイヤリングORピアスを借りてふざけた写真を撮ったりした思い出がフラッシュバックしてきた。
彼がやりたいと思っていた作りたいと思っていたコミュニティー、組織、関係性、エコシステム、それらを作り上げる入り口にやっと立ったところだった。
彼としかできない話があった。またすぐにできると思っていた。もう2度とできない話になった。

1人じゃどうすればいいのかわからず、気持ちをどう持っていけばいいのかわからず、何人かにLINEした。電話した人もいた。
インド帰りの相棒にも連絡を取った。私と同じように呆然とし、東京駅で固まっているらしい。
「話そ」
15分後には四ツ谷駅で合流し、お酒を買って家へ。2人いるとちょっと落ち着く。
深夜、お腹が空いたので小雨が降る中、吉野家へ行く。
終電のない時間。ネクタイをしっかり締めた会社員が牛丼を2つ持ち帰りで注文している。現実に引き戻される。

何があったって、生きているかぎりいつまでも今の状態にとどまり続けることはできない。時計の針は周るし世界は動く。
悲嘆に暮れたってレポートの提出は3日後だし、インターンの面接は来週だし、テストは再来週。現実は待ってはくれない。
だから、

「今日は1人で歩く。そうやって好きに生きてきた。仲間の内の何人か空にいるから、俺は上を向いて歩く」(ハルジオンbyUVERworld)
そうしよう。

「別れ惜しんで泣くだけんじゃなくいつか自分だって、変わらず死んでいくことも忘れんじゃないよと、人が生きるために与えられた時間はきっと、必要な時間の半分も渡されちゃいないんだ」(いつか必ず死ぬことを忘れるなbyUVERworld)
きっとそうなんだね。

僕らが別の世界で彼に挨拶するとき、彼が作ろうとしたコミュニティーを彼が羨むほど素晴らしいものにしたことを報告したい。
着火だけしといて最初に抜けしたことを思いっきり詰って詰って土下座させて笑って抱きしめたい。

おっしー、あんたの遺志が具体的に何だったのかは正直わからない。でもあんたが作りたかったものがおれたちだったなら、おれたちの全体に流れる意志こそがおっしーの遺志だよな。
だったらおれたちで好き勝手やらせてもらって構わないよな。勝手に抜けたあんたが悪いんだ。あんたが天からどれだけ叫ぼうがおれたちにその声は届きはしない。
せいぜいそこから指をくわえて見てろよばかやろう。

いつになるかわかりませんが、下衆い話も崇高な話も持っていきます。ちょっと待っててくださいね。30年お疲れ様でした。
また、会いたいです。